日本人と酒 10
当時はこのように非常に貴重なものでした。醸造が困難なものであったのです。「さけ」という名称も酒の持つ霊力を大いにたたえたものです。「さけ」という言葉は「咲く」や「桜」に通じ、明るく開ける意味のめでたい言葉であり、「生命の花を咲かせ、開かせる霊妙不可思議な霊力を持つ神の薬」という意味がありました。日本古来の神道思想では「言霊」を重んじるため、「さけ」「咲く」「桜」などの音に通じるものを大変大切にするのです。
次第に技術が発達してから醸造が楽になって来ると、酒盛りのなかに遊びの要素が入ってきて神祭りと酒の関係は希薄になり、娯楽的な要素が強くなりました。ただし、1月1日、3月3日、5月5日、9月9日などの節日に宮中で行われる儀式の酒宴が行われますが、このことを「淵酔」または「沈酔」と呼ぶのは古代の名残でしょう。これらの儀式は酔っぱらうまで酒を飲む儀式のことであり、古代の酒盛りの名残と言われています。先述の通り神と一体となり人と一体となるために酒は飲まれていたのですが、そのためには我を忘れ我をなくするまで酔っぱらうのが適切であるとされていたのでした。
これらの儀式としての酒盛りは、今日でも一部の田舎や民間の神祭り、神社のあとの直会(なおらい)という形で生き残っています。
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